カサブランカ 籐 ラタン とは?
1.籐(ラタン)の歴史
日本での籐(ラタン)の歴史は古く、1000年以上前から愛用されてきました。と言っても、当初は家具として使われていたのではありません。
藤原時代の重藤の弓、なぎなたの柄巻、鎧のかがり等、戦いの武器に多く使われていました。
また建築にも用いられ、神社仏閣の棟と棟との接合や、木口のひび割れを防ぐためのタガ締め等に欠かせない素材とされていました。
そして、徳川時代になると籐工芸の技術が進歩し、たばこ差し等が作られていました。
明治時代になり、ようやく籐(ラタン)が家具として使われるようになってきました。
シルクロードから揚子江を経由して満州から籐(ラタン)家具の製造技術がもたらされたこと、欧米との交流の中で椅子の文化が浸透したことにより、 飛躍的に広まりました。 その当時、籐(ラタン)の椅子は「西京丸」と呼ばれ人気を博し、また同じ頃作られていた乳母車も爆発的人気だったそうです。
大正時代になると従来の籐製品だけでなく、バスケットやカゴ等も多く作られるようになりました。
戦争中は一時中断していましたが、戦後GHQの進駐により本格的に復活しました。タンス類等の箱物家具もこの頃から作られるようになり、 国内の籐(ラタン)家具の生産は活況を迎えました。
高度経済成長期に入り機械化・合理化が進み、生産拠点は国内から海外に移りましたが、台湾やフィリピン等との交流により技術が発展しました。
その後、曲げ木等の技術も向上し、様々なデザインの籐(ラタン)家具が作られるようになりました。
現在ではスチールと組み合わせる等繊細なデザインのものもあり、様々な用途や場所で使われ、愛されています。
2.籐(ラタン)って何?
籐(ラタン)は熱帯や亜熱帯に自生するツル状のヤシ科のつる性植物で、表皮に長いトゲを持っています。
そのトゲを使い、他の高い樹木にまわりつきながら太陽を求めて高く伸び上がるように成長していきます。また成長速度も他の樹木と比べて随分早いです。
種類も200種以上と多く、原産地としては、アジア南部のインドネシア、マレーシア、フィリピン、ボルネオ、スマトラ等です。
3.籐(ラタン)の特徴
(1)軽くて柔らかくて、そして強い
籐(ラタン)の最大の特徴と言ってもいいのは、「軽さ」「柔らかさ」と「強さ」という一見相反する特徴を有していることです。 そのため、椅子の背もたれ等は程よいしなり具合で体にフィットします。 つる性植物特有の軽さと柔軟さを併せ持ちつつ、堅牢な性質の籐(ラタン)は大事にお手入れすると半永久的にお使い戴けます。
(2)自由なデザイン
柔らかで丈夫な籐(ラタン)を使えば、複雑な曲線も自由にデザインすることができます。 職人の技によるしなやかで滑らかな曲線は機械等では作り出せない上品なデザインです。
(3)暖かな温もりの素材感
機械化が進んだとはいえ、まだまだ職人の手に頼ることが多い籐(ラタン)家具は自然の素材を生かした暖かみのある家具です。 夏の家具と思われがちですが、冬でも快適にお使い戴けます。実際、日本でも北海道でよく売られていて一年中通してお使いいただいています。
4.籐(ラタン)家具と曲げ木家具の違い
どちらも曲線のデザインが特徴ですが、フレーム部分でいうと、籐(ラタン)家具は当然のことながら籐(ラタン)を使っていますが、曲げ木家具は主にブナ材を曲線に成型しています。
また、接合部分も籐(ラタン)家具がピール巻きやレザーを施しているのに対して、曲げ木家具は釘やビス等で止めています。曲げ木家具で有名なものではトーネットがあります。
5.籐(ラタン)の種類
セガ
インドネシアのカリマンタン奥地に分布し、太さ4〜12mm程度のツル状の籐です。葡萄のような紫色の果実は食用に供されます。
美しい艶のあるホーロー質の表皮で覆われており、主に敷物として、また皮籐として巻材や椅子の座面や背もたれによく使われます。
ロンディ
セガと異なりホーロー質がないために艶がありませんが、柔軟性に富んでいます。品質の良いものは、皮籐として利用され、ヨーロッパでは染色として使われます。
巾の狭い割籐に加工して巻材としたり、濡らしてカゴや椅子を編むのに使用します。
ウンプル
軽くて柔らかい素材です。繊維が荒いために、細かな丸芯にはなりませんが、バスケット等の編み材として使用します。皮籐としても使いにくいですが、比較的安価な籐です。
マナウ
最も太く強靭な籐で、マレーシア北部、スマトラ島等の山間部の傾斜地で14年かけて成長します。
節目は低く太さも均等で繊維が細かく、硬くて美しいホーロー質で覆われています。ヨーロッパでは皮付のまま使われることもあります。
トヒチ
マナウに次ぐ太さを持ち、硬くて重い籐です。加工性に優れているので、椅子のフレームによく使われています。皮付きでも十分に美しい籐ですが、皮を剥いて染色して使用されます。
染色すると細かく密な導管がくっきり現れ、籐の特徴を現します。
バターン
比較的まっすぐで柔軟性があまりないので、曲げにくい籐です。緩やかな曲線を出す部分に使用します。日本には材料としてはあまり入ってきません。
6.籐(ラタン)の材種
<構造材>
太民・・・直径28〜50mm程度の太い籐で、主に椅子やテーブル等のフレームとして使用されます。
中民・・・直径20〜28mm程度の太さで、小物のフレームとして、あるいは数本を合せて椅子のフレームとして使用します。
幼民・・・直径20mm以下で小物やカゴのフレームとして使用されます。
丸籐・・・直径5〜12mm程度の太さで、装飾を兼ねた構造材として使用されます。
<化粧材>
皮籐(ピール)・・・上質の丸籐から皮を裂いて、厚みや巾を調整したものです。椅子などのフレームの接合部に巻く補強材としてよく使用されます。
丸芯・・・丸籐の皮を取り除いた部分を円形に挽いたもの。直径1.4〜15mm程度まであり、カゴを編むのに使用されます。
平芯・・・丸籐の皮を取り除いた部分を平面形に挽いたもの。椅子等の装飾部分に使用されます。
7.籐家具(ラタン家具)のお手入れ
日頃のお手入れは、布か布巾等でカラ拭きをすれば十分です。濡れ雑巾でも結構ですが、その場合は硬めに絞ってください。
また、皮籐(ピール)の巻き部分やフレームとフレームの間の溝部分はホコリが溜まりやすい部分です。溜まったゴミやホコリ等はつまようじか水に湿らせた綿棒で取り除いてください。
使い古した歯ブラシや掃除機を使っても結構です。編み目部分もホコリが溜まりやすいので、時々洋服ブラシ等で掃除してください。
8.シミ・汚れがついた場合
柔らかい布かスポンジにご家庭用の中農洗剤を薄めたものをつけ、軽く拭きとってください。汚れが強い場合はたたくようにして汚れを浮かしてください。
汚れが取れましたら、乾いた布で洗剤と水気を丁寧に拭きとってください。
なお、シンナーや家庭用ワックスの使用は塗装がはげる場合がございますのでお止めください。
資料提供:(株)村田合同